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山県の「おいしい」が集まる場所/山県ばすけっと店長 山口貴寛さん


山県市ににぎわいをつくりたい



東海環状道山県IC開通を受け、2021年6月1日山県バスターミナルとして山県ICの近くに整備されました。その隣に同年7月にオープンした「山県ばすけっと」は、ぎふ農業協同組合(JAぎふ)が運営しています。オープン当時は「にぎわい創出拠点」と名付けられ、山県市内でバスターミナルを中心としたにぎわいをつくりたいという行政の計画と、地域の中で農業を発展させ、そして地域を活性化させていきたいというJAぎふの思いが合わさり、一緒になってつくりあげた場所です。



JAぎふの職員として、立ち上げメンバーでもあり、現在店長をしている山口貴寛さんは「農家さんたちが何かをつくった時に、それを販売したりPRしたりする場所が必要ですし、お客様からすると買い物ができる場所であり、出向く目的となるような場所が欲しい。それらを兼ねそろえる場として、この施設が出来上がりました」と話します。

山県のおいしさを伝えるための工夫



「持続可能な農業」と「地域の活性化」という目的を掛け合わせた施設のコンセプトは「人とひとを山県の美味しさでつなげたい〜地域の魅力を農家とともに〜」。それを実現するために、商品の作り込みに重きを置いています。山口さんは「来てくださる方に商品を見る楽しみを味わってもらいたいので、商品の種類数は多くしましたが、山県の味をメインに紹介する形で、勝負したいと考えていました」と話します。



まずオープン時の目玉となったのは、「おおもの」という品種のスーパースイートコーンと呼ばれる糖度の高いトウモロコシです。市内で生産されていましたが量産とまではなっていませんでした。「朝収穫したトウモロコシは一番糖度が高いが、なかなか採れたてのものを買う機会がありません。ここでは毎朝採れたものを販売できるので、他と違いが出て、さらにお客様に喜んでいただけるものだろうと思いました」と、山口さん。市内の農家さんに生産を依頼し、さらに付加価値をつけてブランド化するために、規格やグラム数、形や梱包の仕方まで基準を設け、それをクリアしたものに認定のシールを貼ります。山口さんの予想はあたり、連日購入する人が並ぶほど大人気の商品となりました。

また、山県は栗が有名ですが、あるとき地元のお客様から「地元の栗を買える場所がなかった」と言われたそう。収穫された栗の多くは市外に出荷され、市内にはあまり流通していませんでした。今では旬の時期になると山県ばすけっと店頭に地元の栗が並び、毎日のように地元の人が買っていくそうです。さらに栗の販売時には、皮を剥いた状態でお渡しするというオプションをつけました。そうすることで、お客様は手軽に栗を味わうことができるようになります。販売側としても付加価値をつけることで、高単価が実現し、農家さんから高単価で仕入れることが可能となり、農家さんの所得向上にもつながるという良い連鎖が生まれます。



店内奥には食事ができる場所があり、提供される料理には山県市産の食材が使われています。例えば海鮮丼は、一見海に面していない山県市でなぜ?という疑問も浮かびますが、実はここで味わってほしいのはご飯の方。山県市産の米「はつしも」は、吸水性が程よく、鮨屋で好まれて使われているほど、魚との相性が良いと言われています。ブランド鶏や特産の栗、旬の野菜などさまざまな山県の味がいただけます。

山県にはいいものをつくる農家がたくさんいる!



山口さんに店を通して気づいた山県の魅力を尋ねると、「毎日店に並ぶ農産物や農家さんたちを見て、とても質が高いものを普通に置いているところがすごいなと感じています。冬に人気のイチゴは、谷原さんという農家さんが持ってきてくれます。おいしいのはもちろん、品質がきちんと保たれているという安心感があります」。トウモロコシも店が設けた基準より、さらに高い基準で選別したものを納品してくれる農家さんが多く、とてもありがたい環境です。「お客様にもそれは伝わると思うので、山県のものは良いと知ってもらえる。農産物の魅力だけでなく、生産者である農家さんの魅力がとても大きいと思う」と話してくれました。

場所、地域のポテンシャルを最大限に発揮して





よい農産物、よい生産者という山県の魅力がまだまだ知られていないと感じることも多く、トウモロコシを新しくブランド化したように、今後もブランド農産物を増やしていきたいと山口さんは考えています。山県ばすけっとでは市内の栗を加工した栗ペーストの生産を行っています。それは、加工するには最低ロットがあり、1つの農家だけでまとまった量をまかなうことが難しいと考え、複数の農家さんからいったん買い取る形でまとめて加工し、必要があれば買い戻していただいて、農家発の新商品が生まれることなども期待しています。将来的に、お菓子屋さんとタッグを組んで、山県の栗ペーストを使ったお菓子イベントなども開催をしたいと考えています。



山県ばすけっとの大きな強みは、バスターミナルに隣接する立地。そこで山口さんは、「例えばバスに農産物や加工品などを積み込み、市内外に『山県のおいしさ』を届けられたらという夢もある」と話してくれました。山県市内や近接地域で、そんな夢のようなバスが走っている日も遠くないかもしれません。

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分