見出し画像

山県の思い出の先にある、まちのカメラマン「井上写真館」/金武雄司さん

みんなの記憶に残るように

「金武(かねたけ)さーん!」
配達のときに、まちでよく声をかけられるそうです。それも名前で。金武さんの気さくさを慕って、高校生が店にやってきて、「今はこんなことを熱心に頑張っている」と話してくれたり、大学生が就職活動の写真を撮ってほしいと来店してくれたりするそうです。

金武さんが代表を務める「井上写真館」は、昭和47年からずっと続く山県市唯一の老舗写真館です。“記憶に残る”温かな写真と金武さんを慕って、多くの市民が利用しています。昔は山県市内にもう一軒、別の写真館さんがあったそうですが、その写真館さんも時代の流れと共に、なくなってしまいました。

金武さんがカメラマンをする時のスタンスは、“記憶に残るカメラマン”。
みんなの記憶に残ることが、地域の草の根の活動として相談事を気軽に話せる存在でいれたり、良い写真を撮れることや商売につながったり、そして、自分自身が何より楽しいと、山県市の人々を20年間撮り続けてきました。

子どもたちの一瞬を切り取ることを大事に

まちの写真館は井上写真館だけなので、学校行事などの記録を残すのは、井上写真館のお仕事です。山県市の小中学校は12校あり、そのうち10校の卒業アルバムを担当しています。金武さんはこの卒業アルバムに力を入れているとのこと。その理由は、子どもが好きなことと、子どもたちの成長を親に見てほしいから。自身も3人の子どもの親。親の立場になったときに、子どもの学校生活を見れないことを感じ、親のためにもきちんと見えるように残してあげたいと思うようになったそうです。

そんな金武さんが手がける卒業アルバムは、親にも子どもたちにも大好評。それは笑っている写真が多いから。以前は、かしこまって個人写真などを撮影していましたが、子どものためにも親のためにも、笑った顔に変えたそうです。親御さんからは、「自分の子どもがこんなふうに笑うなんて知りませんでした。」と言われることも。そして、満足を得た子どもたちは、その記憶を辿り、自分の子どもの写真撮影時にも来店してくれるそうです。

まちのほとんどの学校を担当しているということは、自然と山県市の多くの子どもたちと関わります。まるで、まちを見守るお兄さん。まちのみんなと家族のようなつながりを感じます。思い出の先には必ず「井上写真館」の存在があります。

先代の教えを胸に

みんなの思い出を刻む「井上写真館」にはこんな想いがあります。――お客様のよろこびを私の喜びとしたいこの言葉は、写真館に掲げてあります。たまたま偶然、カメラマンになり、たまたま偶然、山県市で働くことになった金武さんは、おととし先代から引き継いだこの店を絶やすことのないように、先代が掲げたこの言葉を今も変わらず社訓にしているそうです。社訓に忠実に「お客さまが主役」で輝いてもらうために、そして、地域のお客さまが輝くために、地域とのつながりも持ち、頑張るのです。地域活動として、小学生には「まちの名人」の授業で、写真の仕事について教えたり、50から80代の方々が活動するデジカメクラブに花、夕焼け、川の流れなどの撮り方を教えにいったりしています。高齢者の方々が撮られている「自然」は山県市民には身近すぎて、魅力だと伝わっていないのではないかと感じておられ、写真を通して少しでもその魅力が広がっていくといいなとも話しておられました。――写真は燃えない限り消えない。最後に、写真を通して、良い思い出を残してあげたい。是非デジタルだけでなく、お家に写真を飾って思い出を各家庭の彩りに変えてほしいという想いを語ってくださった金武さん。思い出の“瞬間”を切り取るのは、いつの時代も写真です。皆さんも、自然や、金武さんのような温かい“人”がたくさん集う山県市を「写真」におさめに、思い出作りに来ませんか?

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分