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ありのままの山県、それぞれの山県らしさ/山口晋一さん

美山地区との出会い

山県市の北部にある農家レストラン「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」で、おばちゃんたちといっしょにレストランを運営しているのは、西武芸地区生まれの山口晋一さんです。山口さんの生まれ育った地区は、統合により「山県市」となりました。山口さんは小中学校の統廃合が進んでいく最中、「このまま子どもの頃の思い出がなくなってしまうのでは?」と思ったそうです。

自分の育った地域がだんだん寂しくなっていく様子を見て、山口さんはボランティアで知り合った仲間と一緒に団体を作りました。「地元のために、何かしたい」と、市役所に相談に行くと、美山地区で活躍するJA女性部の「ちゃ茶クラブ」さんを紹介されます。

同じ市内でも初めて入る地域でしたが、クラブのみなさんの優しさや温かさにふれた山口さんは、この地域のことを広く知ってもらうための方法を考え始めます。しばらくして、当時働いていた会社を退職し、地域で採れるものを使った「栃の実の皮むき体験」や「田舎料理教室」「竹を使った花器作り」など、地元に根付いた活動を本格的に始めていきました。

さらに次のステップへ

地域を知ってもらうイベントを行いながら、山口さんは山県市の集落支援として農家レストラン「舟伏せの里へ おんせぇよぉ~」の運営に携わっていくことになります。廃校となった小学校を利用してレストランにするという計画が進む中、これまで飲食業を手掛けたことはなく、すべて手探りで始めることになった山口さんでしたが、おばあちゃんの意見を聞きながらメニューを作成したり、たくさんの人にレストランに来てもらうためにどうしたらいいのかを考えながら、様々な活動をしてきました。

現在は、金・土・日・祝の営業ですが、山県市内だけではなく、遠方から多くのお客様に来ていただけるレストランになりました。現在、山口さんは3年の任期の集落支援を終了し、北山公民館の主事の仕事や集落支援員を行っています。

また、2017年にやまがたフットパス実行委員会の代表となり、地域おこし協力隊OBメンバーと一緒に委員会を再スタートしました。やまがたフットパス実行委員会は、2015年の夏に山県市を盛り上げていくために、市民の有志と山県市の集落支援員、地域おこし協力隊が集まってスタートした委員会で、主に山県市での里山歩きを提案しています。ありのままの里山の風景を楽しみながら歩くことで、地域の自然や歴史・文化などを体験できるような企画を提供してきました。

2017年に再スタートしたやまがたフットパス実行委員会では、11月に「山県ツアーズ」を立ち上げ、複数のサイトで案内されていた体験プログラムを集約しています。また、新しく体験プログラムを開催したいと考えている人にむけてプランニングや広報の支援を行う体制を整えています。山県市で開催される体験プログラムは丁寧に企画されていて定員も少ないことから、地元の人との繋がりを密に持てるようになっています。それは、参加するお客さんはもちろん、開催する地元の人の負担も少なくすることが大切だと考えているからです。

暮らす人々の笑顔を守りたい

山口さんは写真撮影が好きなこともあり、時間を見つけては地域の自然の美しさを撮影しています。「『舟伏の里へ おんせぇよぉ~』でinstagramを初めたことがきっかけで、レストランの存在を知ってもらうことにつながり、実際にお客様に来ていただけました」。と山口さんはとても嬉しそうです。しかし、最近では「円原の伏流水」を撮影したカメラマンの写真が写真雑誌に載る機会も増え、だんだん有名になってきたことで訪れる人も多くなりました。

狭い地域であることから、一度にたくさんの人が訪れることに対して戸惑うときもあるそうです。暮らす人の日常に支障が出てはいけないので、イベントを開催するときには、自治会長さんを通じて地域のみなさんに事前にお知らせしたり、訪れる人にもありのままの自然の魅力を大切にしてもらえるように伝えています。

「山県市に来ていただいた人に喜んでもらえること、そして地域で暮らしている方々の笑顔をみると本当に嬉しくなります。」と話す山口さんの姿からも、この地域で暮らすみなさんへの愛情を感じます。山口さんの唯一の悩みは今この地域に住んでいないことだといいます。すこし離れた場所で暮らしていることを気にしていますが、その心配は全くないほどに、この地域に寄り添っています。山口さんは「自分で決めた人生なので言い訳をしなくてすむし、今は本当に楽しい」と笑顔で話してくれました。そんな頼もしい人が、ここ山県に暮らしています。

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分