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食を通じて山県をもっと元気にするために/美濃山県元気ファーム梅田恵梨子さん

山県産だけでつくる熟成黒にんにく

山県市伊自良地区にある梅田建設株式会社さんは、1955年(昭和30年)から山県市で木材製材業を始め、現在は建設業を営む企業です。建設業である梅田建設株式会社さんが黒にんにくの製造を始めたのは、2008年山県市産業振興課からの呼びかけで、にんにくの栽培で山県市を元気にする取り組みに、地域のみなさんと共に参加することになったことがきっかけでした。

にんにく栽培は難しく、形が悪く売り物にならなかったにんにくも数多くありました。大切に育てたにんにくを捨てたくないという想いから、黒にんにくの加工をはじめたそうです。現在では、多くのお客様に喜んでいただける人気の商品となっています。

そして、2013年に黒にんにくの販売と加工品の製造を行う「美濃山県元気ファーム」を設立しました。「美濃山県元気ファーム」で、黒にんにくの販売を担当しているのが梅田恵梨子さんです。梅田さんは、梅田建設株式会社に事務職として入社しましたが、「美濃山県元気ファーム」設立を機に、黒にんにくの販売を任されたそうです。

「当初取扱い商品は黒にんにくだけでしたが、山県市産業課の方にも相談しながら、減圧乾燥機を導入し、機械の活用を考えていく中でも、専門家の方や様々な方のアドバイスや援助があり、今ではいろんな加工品を作ることが出来るようになりました。」と梅田さん。

山県市で産まれて育った梅田さんは、黒にんにくだけでなくこの地で生産されたものを生かして、美味しいものを作っていきたいと考えています。

お客様に喜んでいただける味の追求

黒にんにくの製造を行っている農場長の棚橋さんに、黒にんにくの製造についてお話を伺うと、「今年も1000キロのにんにくの種を植え付けたんだ。1丁5反約1500㎡あるかな?」と言われます。はじめは少ない面積でしたが、耕作放棄地などを利用しながら、現在ではこれだけの広い面積でにんにく栽培を行うようになりました。

にんにくの種類は地元で生産された脂質が低く鉄分が豊富な「元気玉」というブランドです。植え付けは9月下旬におこない1月2月の冬の間は厳しい寒さの中でより一層甘さが増していきます。しっかり苗の管理をして5月下旬から6月上旬ににんにくを収穫し、乾燥室に1ヶ月以上入れて乾燥させます。

その後、にんにくのかたまりをばらして常温で保管していきます。「通常なら1ヶ月で熟成は終わりますが、ここの黒にんにくはじっくり時間をかけて、完全に乾燥させないように6ヶ月から1年ほど低温熟成させている」と棚橋さんは教えてくれました。黒にんにくの熟成に合う温度を見つけるまで、何年も試行錯誤されたそうで、試食させていただくと甘くてフルーティーな味わいがしました。

また、美濃山県元気ファームさんでは、健康食品といった位置づけの黒にんにくだけではなく、広い世代に山県産の素材を活かした商品を手に取ってもらえるように様々な商品開発をしています。その中の1つが、紅はるかというさつまいも使って作るほし芋です。

「今日からちょうど干し芋の製造に入ったんですよ。今年はいつもより早いスタートです」と梅田さん。美濃山県元気ファームさんの建物から、なんだか優しくて懐かしい匂いが漂ってきます。

今年の秋に収穫した3トンのさつまいもを1ヶ月程ねかせたあと さつまいもを洗浄します。そして蒸したさつまいもを1個ずつ皮をむき、カットしたものを大型の減圧乾燥機に入れ、17時間かけて干し芋が完成します。この機械を使うことで、低温で効率よくさつまいもを乾燥させることができます。商品の味・色・香りを損なうことなく、おいしくきれいに仕上げることができ、しっとりとしたやわらかな干し芋ができます。

新たな商品作りへ

さつまいも以外にも、しょうがパウダーやごぼうを栽培してごぼう茶に加工しています。また、冬季限定商品として、黒にんにくをチョコレートでコーティングした『イロドリ黒にんにく』という商品もあります。黒にんにくとチョコレートの相性が良いと思い、専門家の方に相談しながら、スタッフと共同で作り上げました。イロドリという名前のとおりパステルカラー中心で若い女性に好評なのだそうです。

ここで働くスタッフの大半は家庭の主婦層。主婦の視点で気づく率直な意見が、商品開発にとても役だっていると梅田さんはスタッフのみなさんを頼りにしています。ドライフルーツ『かじゅえりー』もそのひとつ。山県市で採れた富有柿やいちご等を利用しています。生産者が限られることで大量生産することはできませんが、安心して食べ続けることが出来るものを製造しています。

今後について尋ねると、梅田さんはじっくりと考えた後に、
「まずはこの美濃山県元気ファームを継続していくことが一番重要と考えています。お客様の期待をうらぎらないようにし、生産者の方の想いをお客様に伝えていきます」
と、静かに答えました。

梅田さんは直接お客様に販売して喜んでもらえることや地域の人や生産者の方とのふれあいと信頼できる明るいスタッフに囲まれ本当に楽しく仕事ができています。

梅田さんの言葉1つ1つから、山県に対するひたむきな思いを感じます。これからも梅田さんは、新しいことを次々と追い続けていくだけではなく、大切に思っている山県の人々のことを優先しながらじっくりと進めていくことでしょう。

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分