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いつしかお豆腐屋さんになった、谷合にある「臼井とうふ店」/臼井康宏さん

大豆の味がするお豆腐

山県市北山にある農家レストラン「舟伏の里へ おんせぇよぉ~」のランチで提供されたお豆腐料理が気になって、おばあちゃんから教えてもらった、地元谷合の臼井とうふ店に行ってきました。場所は、山県市役所美山支所の前の道を過ぎ、谷合の交差点付近の「田舎どうふ」の看板を目印に、右に曲がった所にあります。大豆の味がするお豆腐がここにありました。

朝、お店の中に入ると、ちょうど奥さんが大量の「がんも」を揚げているところでした。なんとなく懐かしい匂いがします。揚げたての「がんも」を購入して、店先で食べさせていただきました。お醤油を一滴垂らして口に入れると、そのおいしさは、うーん言葉では簡単に言い表せません。「がんも」はお豆腐に人参とひじきをいれて、ゆっくりと時間をかけて揚げていきます。

いつしか自然と豆腐屋になった

臼井とうふ店が販売するのは、お豆腐やがんもだけでなく、ザル豆腐・お揚げ・おからドーナツなど多彩です。おからドーナツもふんわり柔らかで、子供たちのおやつには好評です。最初はご自分の子供達のおやつだったのですが、ご近所で好評となり、いつの間にか商品となったそうです。今では市内のスーパーや直売所「ふれあいバザール」などで買うこともできます。

昔はどこでも、日常に食べるものは自宅で作っていて、ずっと作り続けていたら、いつしか、うちが豆腐屋になっていたんです。と午前中の配達を終えられたご主人の臼井康宏さんが答えてくれました。

ときどき、こうして豆腐屋をしていると「こだわりは何ですか?」と聞かれるときがあるが、ただ毎日毎日、今日美味しく食べてもらえるのを作っているんだ。だから賞味期限は当日のみ、食感が変わるからね。昔の頑固おやじのような雰囲気もありますが、お豆腐の味には優しさが込められていて、そこにはずっと昔からのとうふ作りを実直に続けている本当の職人の姿をみる思いでした。

谷合の井戸水がおいしさを保つ

臼井とうふ店では、もちもち感を出すために国産の揖斐の豆と、海外の豆をブレンドしてお豆腐を作っています。季節や新豆等を考慮して配合を変えています。木綿豆腐をつくるとき、まず豆を水に浸し、その後豆を粉砕し、豆を煮ておからと豆乳に分けるように絞ります。次に豆乳に、にがりをいれ煮て固まらせます。あとは容器に豆腐を流し込み重石をして豆腐が固まったら完成です。この工程で大量の水を使用しますが、昔から、ここにある井戸水を使用しています。

水道水より井戸水のほうが、お金がかからないからと使い始めた井戸水。使ってみると豆との相性も良く、この味を続けるにはここの井戸水が必要なので、この地でしか作ることができない豆腐の味なのです。それはこだわりという言葉で表現できるものとは違い、自然にそうなったんです。と話すご主人。山県の美味しい水と自分が望む味をつくるために適した豆を選ぶこと、そこから生まれた素朴な田舎どうふ。どこか懐かしい味は、今日もここ山県市の谷合の臼井とうふ店で、つくられています。

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分