こだわったのは優しい口どけ、岐阜名産「ながらういろ」/長良ういろ 浦瀬 将孝さん
山県市高富地区にある株式会社長良ういろは、岐阜を訪れる旅行客にお土産として人気の「ながらういろ」を製造販売しています。工場兼本社を訪れると、黒い壁に岐阜の伝統文化「鵜飼」の鵜が、大きな羽を広げている様子が描かれているのが目に留まります。先々代が60年前からういろ作りをはじめ、現在は浦瀬将孝さんが3代目として営んでいます。
主な材料は岐阜県産の米粉
長良ういろは、もともと米農家だった先々代が、米粉特有のモチモチ感を生かして何か作れないか?と考えたのが始まりです。一般的にういろとは、砂糖に小麦粉などを混ぜて練り合わせ、蒸した和菓子。餡と砂糖や寒天を混ぜて冷やし固める羊羹と似ていますが、製法や食感には大きな違いがあります。また、製造する地域によって、使用する粉にも違いがあります。
山口県ではわらび粉や葛、神奈川県小田原市や愛知県名古屋市では小麦粉、もしくは小麦粉と米粉をブレンドしたものが多いそう。しかし長良ういろは先代が米農家と言うこともあり、微量のでんぶんを用いる以外、岐阜県産の米粉のみを使用して製造しているのが特徴です。
口どけの良さへのこだわり
長良ういろは、「もっちり感」と「口どけの良さ」を活かしたういろをお客様に届けることにこだわりを持っています。製造過程において昔ながらの杵と石臼を使うことで、もっちり感を引き出す成分であるアミノペクチンを壊さずに細かい米粉にできることが、口どけの良さの決め手です。
原材料となるお米は、岐阜県のオリジナルブランド「はつしも」を使用。粘り気が控えめで口どけがさらっとしており、粉にしやすいことからこの品種を選んでいます。そして和菓子では珍しいグラニュー糖を使用していることもこだわりの一つ。上白糖では粘り気が出過ぎてしまうため、口どけの良いグラニュー糖を使用しています。そこに山県市のおいしい地下水を加えて、妥協のない逸品「ながらういろ」が完成します。
浦瀬さんおすすめ「ういろ」のおいしい食べ方
ういろのつくり方とは別に、浦瀬さんからういろをおいしくいただくコツを教えていただきました。
夏場などにさっぱりと冷たいものが食べたいときは、食べる30分〜1時間前に冷蔵庫に入れます。冷凍庫に入れたり長時間冷蔵庫で冷やすことは、ういろの味や食感が変わってしまうため、おすすめできないとのこと。
秋から冬にかけては、ういろを網で焼いたり、フライパンにバターを入れて炒めることで、またひと味違ったういろを味わえます。仕上げにホイップクリームやきな粉、あんこなどを加えてもおいしさが広がるそうです。ぜひ試してみてください。
地元の人に愛されるおやつに
15年前、地元の人にもっと「ながらういろ」を知ってもらいたい、お客様と直に触れ合いたいという思いから、岐阜市内に「鵜飼茶屋しゃぐ」を出店しました。通常の「ながらういろ」に加えて限定の生菓子や、かき氷にソフトクリームやういろをのせたフラッペなどを提供しています。店舗を訪れていただいたお客様から頂く意見や感想は、新商品開発に活かされています。
また、最近では地元のスーパーでの取り扱いも多くなりました。スーパーなどで商品を手にしたお客様が、山県市内の会社で「ながらういろ」を製造していることを知り、後日、高富地区にある製造所まで買いに来てくれることも増えました。いろいろな形でお客様とつながっていくことができ、浦瀬さんもとても嬉しそうです。
山県らしさを「ういろ」に活かしたい
長良ういろの一番人気は「生ういろ 利平栗」。山県市内でとれた栗だけを使って製造しています。「生ういろ 利平栗」は毎年600本ほど製造され、すぐに完売するほどの人気商品。最近は栗以外にも、山県市の名産を使ったういろ作りの研究に励んでいます。
研究に使う材料は、山県市内で採れる果物から黒にんにくまで様々。浦瀬さんをはじめ工場の皆さんは、現在試行錯誤の日々を送っているそうです。こうした努力から生まれる新商品は、市内のイベントなどでお披露目されることもあるそう。浦瀬さんは最後に「山県らしさが詰まったういろを通して、市の魅力を広めていけたら嬉しい」と、想いを話してくれました。