昔ながらの里山の味・だつの煮物
里山のくらしを支えてきた里芋
山県の北部にある美山地域神崎地区は、自然が豊かな山間にある里山地域。平地が少なくて、田んぼもなく、お米が収穫できない土地柄のため、昔は雑穀や畑でとれる野菜を中心に食べて暮らしていました。美しい自然に囲まれ、きれいな水と空気に恵まれた美山地域神崎地区は、石灰質のやせた土壌で芋の栽培に適しているため、おいしい里芋やじゃがいもがたくさんとれます。その中でも、里芋はこの地域に住む人々の暮らしを支え続けた野菜で、お米が貴重だった頃は、炊いたご飯に練った里芋を混ぜて芋餅を作っていました。
葉柄の部分は、煮物や甘酢漬けにしたり、天日干しにして保存します。食料の確保が難しかった時代は、その季節にあるものや、食材を無駄にしないために保存の仕方などを工夫して生活していました。里芋料理は、山県のふるさとの味として今も親しまれています。
里芋の茎
ずいきや芋がらなどの呼び方で知られている里芋の茎ですが、山県の北部では昔から「だつ」と呼んでいます。
里芋は、品種で茎の色が違うのですが、
八つ頭の茎は赤いので「赤だつ(赤ずいき)」
普通の里芋は、緑色の茎をしているので「青だつ(青ずき)」と言います。
この「だつ」というのは、「白だつ」からきているもので、里芋の葉柄に紙を巻いて日に当たらないようにして白く軟化させたもの。脱色されるところから脱=だつと言われるようになり、色の違いから、赤や緑のものも「だつ」と呼ばれるようになったようです。
赤い八つ頭のだつは甘酢漬けにすると色がきれいで味も良く、山県では多く食べられています。乾燥させるときは、皮をむいて大きいものは縦に割くようにして切るそうなのですが、おばあちゃんが、切り方を見せてくれました。剥いた皮を糸のようにして切るのですが、包丁がなくても簡単にスッと半分に切れてびっくり。こういうのも、田舎に住むおばあちゃん達の知恵ですね。
甘酢漬けや煮物で食べられていますが、同じ美山地域でも、家々によって揚げを入れたり、こんにゃくを入れたりと、それぞれ違ったレパートリーがあるそうです。神崎地区のおばあちゃん達は、さきいかを入れて煮物を作るとのことで、作り方を教えてもらいました。
だつの煮物の作り方
シャクシャクしただつの食感と、いかの旨味がたっぷりつまった、山県市美山地域神崎地区のおばあちゃんの味です。
煮物の材料だつ(乾燥) 10g、さきいか 30g、醤油 大さじ2、砂糖 大さじ2、水 適量煮物の作り方①、だつを水に30分~1時間ほど浸けて、手でもみ洗いします。この作業を3~4回繰り替えします。②、水で戻しただつを絞って、2~3cm幅に切ります。③、鍋にだつを入れて、だつがかぶるくらいの水を入れて火にかけます。さきいか・醤油・砂糖を入れて煮汁が少なくなるまで煮たらできあがりです。
醤油や砂糖の量はお好みで調整してみてくださいね。だつはアクがあるので、何度も水を変えてしっかりともみ洗いすることがポイントです。さきいかの出汁を吸っただつは、冷めてもしっかり味が付いていました。さきいかが無かった頃は、するめを使っていたそうです。あく抜きに少し手間がかかりますが、この工程さえしっかりやっておけば、おいしく食べることができます。だつを手に入れたら、ぜひ作ってみてくださいね。
※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分