見出し画像

女性が働きやすく明るい職場/株式会社水生活製作所開発部次長 太田美穂さん

女性チームで誕生した新分野の商品「おぷろ」



株式会社水生活製作所がある山県市は、水栓バルブ発祥の地であることから水まわり製品の製造会社が多い場所です。主に給水栓・浄水器類などを企画・製造・販売する水生活製作所が2010年に発売したのは入浴剤「おぶろ」。この商品は女性社員のアイデアで誕生しました。



塩素を除去する入浴剤「おぷろ」を開発した太田美穂さんは農業大学出身。分野の異なる水生活製作所との出会いは、太田さんが参加した就職イベントでのこと。企業側の話を聞いている際に言われた「なんでもやっていいよ」という一言がきっかけとなり、2004年に太田さんは入社しました。その後、水栓などの開発に携わっていく中で、「キッチンの浄水器やシャワーの浄水器があるのだから、湯船に対応する浄水器も欲しい」というお客様の声に応えたくて、太田さんの湯船用の浄水器開発が始まりました。

湯船用浄水器のはずが入浴剤を開発


湯船の蛇口に取り付ける浄水器というのは存在していましたが、サイズが大きく、小型化の難しさと、給湯器から直接給水を行って湯船に蛇口を使わないという世の中の流れが大きな壁となりました。蛇口に取り付けることを考えていた太田さんはそこから、何か固形物を中に入れて最低でも30日は保つようにしよう、など試行錯誤を重ねますが、都度発生する課題に取り組み、試行錯誤期間は約2年半。



使い切りタイプの入浴剤という形状に決まり、そこからは約半年かけて開発し、2010年に製品化。しかし、次の課題は販路。主力製品であるシャワーヘッドと入浴剤を販売する場が異なり、なかなか販売先が見つかりません。ある日、取引先から紹介していただいた人を通じて、全国のドラッグストアへの販路が開けます。その後は、商品力のある「おぷろ」は人気となり、現在はさまざまなバリエーションが生まれています。実際にドラッグストアで売られているのを見かけた際に「ここまで売れるようになったんだな」と実感が湧いて嬉しさが込み上げてきましたと、太田さんは話します。


新しいものを生み出す要因





太田さんは他にも面白い物を開発しており、なかには会長の一声で作ったぐい呑みがあります。香りを出すため形状にこだわり、さらにお土産用にと山県で生まれた明智光秀の桔梗紋を入れています。太田さんは「やったことがないことをするのが好きで、何ごとにもとりあえずやってみようという気持ちで臨みます」と言います。ちなみに浄水器から入浴剤と大きな方向転換をしながらも成功した秘訣については、「周りの意見は大事だけど、そればかりを聞いていると決まらない。独りよがりになるくらい、自分はこれがいいんだという強い気持ちで進めていけば新しいものが生まれる」と教えてくれました。



また成功の要因の1つに、社内の雰囲気もあると言います。基本的に「これをやってはいけない」というものがなく、理由も聞かずにダメと言われることはないそう。もちろん企画を通すには、理由づけが必要になりますが、通ってしまえばなんでもチャレンジできると言います。「おぷろ」を企画したときも「1回やってみる?」と言われて、商品化までの長い期間を温かく見守ってくれたそう。

制度と社内の雰囲気で女性が活躍


2年前に開発部の次長になった太田さんは、開発課と広報課の2つの部署をとりまとめる立場になりました。広報課の後輩である松下さんは「Webサイトの制作など、初めての分野でもすぐに一緒になって取り組んでくれるのでとても頼もしい」と笑顔で言います。この開発部、2004年の太田さんの入社当時、部内で女性は太田さん1人でした。入社時の男女比は今と大きく変わりはないものの、当時はまだまだ結婚や出産で辞めていく女性が多かったそう。そこから、少しずつ社内の制度も変わり、現在は開発部の女性比率は約2/3にまで増加しました。



松下さんに会社について聞くと、2つの働きやすさを挙げてくれました。1つは、1時間単位で取れる有給制度です。子育てでは旗当番や授業参観など少しだけ仕事ができない時間が発生しますが、そんな時に1日や半日の有給ではなく、1時間単位で有給が取れるのはとてもありがたいそう。これは、子育てだけじゃなく病院への通院などさまざまな場面で活用できます。そして2つ目は、その休みの取りやすい雰囲気。お互いの家の事情も話すほど風通しが良く、アットホームな雰囲気があるので、休暇を言い出しやすく、さらにその人でないと務まらないという仕事とならないような仕組みを作り上げていると言います。その結果の働きやすさが女性の離職率の低下につながり、女性比率が増えて活躍している要因になっています。これらの取り組みが評価され、山県市がワーク・ライフ・バランス推進や女性活躍推進に積極的に取り組んでいる企業として認定している「さくらカンパニー」に選ばれました。



太田さんは次長となり、部下のさまざまな開発のサポートを行なっています。今後、何かおもしろいものが世に出ますか?と尋ねたところ、2024年の春以降にあっと驚く新商品の発表があるそうです。水栓バルブの企業という枠にとらわれず、さまざまなアイデアのもと商品が生まれてくる水生活製作所の今後の新商品が楽しみでなりません。

※2024年8月YAMAGATA BASE HPからの移管分